心あたたかい人に・・・ 
    
  

心あたたかい会社をつくろう

そう思って、自転車一台の行商から商売をはじめた私

営業にまわって

店の中から手で追い払われたり

名刺をだしても

チラッと見るだけで

あとは無視されたり

本当に屈辱的な思いをすることがしばしばでした

人間というものは

無視されたり、冷たくされたりすると

つらいものです

いろいろなつらさがありましょうが

無視され、冷たくあしらわれるほど

つらいことはないかもしれません

ですから私は

そんなめにあえばあうほど

そういうことをしない人間になろう

心あたたかい人になろう

――かたく心に誓いました

昭和三十七年の二月

みぞれ降る寒い日

自転車に荷物を積んで歩いていました

小さなガソリンスタンドの前で

入ってよさそうかどうか

追い払われるのではないか

感触を確かめてから合羽を脱ごうと・・・

そのとき、スタンドの事務所のドアが開いて

私の手をもって

中へひっぱりこんでくださった方がいました

ああ寒いでしょう 冷たいでしょう

私の両肩に手をかけて

ストーブの前へ連れていき

寒いから火におあたんなさい

私はその方の服が濡れてしまうことが気になりましたが

その人は、そんなことは気にもせず

団子を買ってきたところだから 一串おあがんなさい

 そう言ってくださいました

涙があふれて団子は食べられませんでした

世の中にはなんとと心の温かい人がいるものか

私もこういう人間になろう

――強く思いました

その人の名は・・・藤山一郎さん
 
 今は亡き往年の有名な歌手でした

このようなこと

色々なエピソードを講演で語った後

車椅子の久人君と千恵子さんからの花束を贈られるとき

講演者はサッとひざまずき

二人に視線を合わせて花束を受け取った

心あたたかい人間になろう

その言葉が、その決意がうそではない

とっさの挙措動作(きょそどうさ)の中に

その気持ちがあふれていた









鍵山秀三郎氏の講演会でのお話とできごとに想を得て作りました。

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