POEMS 中村叶の詩
がんばれA子

中学校は「荒れて」いた
教室の窓ガラスが頻繁に割られたりしていた

その中学校で水泳大会が開かれた
あるクラスでは
代表選手にA子が選ばれた

A子は体に障害を持っていた
番長」が「A子がいい」と言ったので
みんな怖がって
反対の声を挙げられなかった

A子は水しぶきをあげて飛び込んだ
必死になって泳ぐ
けれども
なかなか前に進まない
その姿が滑稽に見えたのだろうか
プールサイドでは
生徒たちが声をあげてはやしたてる

そのとき
ひとりのおじさんがプールに飛び込んだ
背広のままで
ネクタイしたままで

バタバタと水と苦闘しているA子が
沈んでしまわないように
おじさんはエスコートして
















POEMS 中村叶の詩


でも
泳いでいるのはA子
おじさんは手を出そうとはしない

必死に泳ぐA子

背広のままで
ネクタイしたままで
A子に寄り添うおじさん

水しぶき

いつしか
プールサイドは静まりかえった
そして
ひとり、またひとり
 A子に声援を送りはじめた
「がんばれA子!」
「がんばれA子!」
いつしか
「がんばれA子!」の大合唱となっていた


全校生徒のエールの中
A子は25メートルを泳ぎきって
おじさんと抱き合って
泣いた

おじさんは校長先生だった

その日以来
教室の窓ガラスは割れなくなった

 

<「虹の架橋」は群馬県大間々町の洋品店・足利屋,さくらもーる「アスク」が発行する地域情報紙のタイトルです。いろいろな活動を通して出会った心温まる話題や地域情報を満載して毎月1日に発行しております。>という『虹の架橋』に連載の『小耳にはさんだいい話』29話「A子がんばれ」を詩にしてみました。http://www.sunfield.ne.jp/~yachan/niji/

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